嵐の夜、孤独な夜、異国の地で病気になる



昨夜は悲惨であった。みぞおちがどんどん鈍く痛み出して寝れない。ああいうのははじめてである。ネットで調べて見ると「ゲップ、みぞおち、痛み」等で病名が出てくる。潰瘍か? 自分では決められないが、ほとほと不安であった。


CNNではドイツが今珍しい国全体を覆うストームに見舞われていると言っていた。だから風が強いわけだ。こんな風の強い夜に何をしろというのだ。タクシーの呼び方も分からない、大家に助けを求めるのは気が引ける、病院はどこだ、こんな異国の地で孤独の中での不健康はとても惨めだった。


このままでは寝れないと思ったが、孤独の淵で対外的な接触を試みることを例によって拒んでいた。もしかするとこのまま死ぬかもしれない。母のことが思い出された。確かに、このままでは部屋で突然死してもおかしくはない状況だ。寂しいものだった。このまま死んだらどうなるだろうと思った。どうか痛みが自然と引いてくれることを願った。ほらみろ、こんな時にこそ役に立たない神頼みである。


STEPINに電話しようか、でもどうやって、英語を喋らんといかん。というか明日にできないか? 何とか今日の内はこのまま寝入って明日になって行動を起こせないか? 今回でこそこれで一時的には間に合ったかも知れないが次回は分からない。もう目覚めなかったかも知れない。


上腹部に違和感が朝起きてからもあった。げっぷが出た。おそらく何かある。このまま国へ帰ろうかでも明日にかえれるわけでなしと昨夜思っていた。日本の方が勿論精神的に楽だ。このまま放って置いても問題は解決しない。まず起きてSTEPINに電話した。


女が出た。ドイツでは北米と違ってどこの医者に行っても良いらしい。どこに行けばいい医者の探し方分からないというと、向こうは私も分からない自分で探せと言った。恐ろしい出来事である。一刻を争う時には救急に電話した方がよいことを悟った。だが今回のが一刻なのか二刻なのか分からない。救急の呼び方さえ分からない。旅行本を漁って調べてみたりしていた(昨夜)。適当な英語とドイツ語で科の名前を言われて、英語のサマリーだけ聞き取った。あとは自分で調べろ。グーグルマップで調べてみたが良く分からない。


ドイツ語の科の名前をもう一度聞くためにまたSTEPINに電話した。今度は男性が出た。さっきの担当員の名前を言うと彼女いまいないらしかった。ある意味幸運であった。その男性が再度私の話を聞いてくれ、イエローページを調べて医者の名前と電話番号、住所を2つも教えてくれた。住所のスペルが聞き取れずに再三聞き返したが、気長に付き合ってくれた。科の名前を男性が教えてくれた時も、英語でのその名前に自信が無かったからかわざわざ辞書で調べた上で教えてくれた。「内科」である。


ここでまた新たなことを学んだ。外国にて、教育のなってない人間に助けを求める時は「男」に求めること。これは些細な事から重大なことまでを含む。例えば些細なことでは、女に道を聞いては断じてならない。一方、プロフェッショナルに助けを求めるのなら女。こちらが男だと話しやすいのもあるし、看護士なんて認めない看護婦だ論にもある種通じるものである。ただしプロフェッショナルでも道は聞いてはならない。教育のある女は最高だ。教育のない女は悪夢だ。


教えてもらった電話番号に電話。とうぜんドイツ語の受付(女)が出たが英語で話せますかと聞くとドクターに代わってくれた。今日の14:45に予約が取れた。さてどうなることやら。まったくなんて俺はついてないんだ。またみぞおちが痛み出してきたぞ。

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大変そうだ。。

とりあえず、
http://www.pfadfinder24.de/versicherung/index.html#004

“ドイツの医術は世界最高水準です!”

らしいですので。
少々手遅れになっても何とか・・・。

確か救急車が無料だったような、例の友人(看護士)が大したことでないのに救急車を呼ぶ人に腹を立てていましたよ

というより、独和辞典は無かったのですか?あと医療費も最終的には国民健康保険を使えたと思いますよ、一番安い物を選ばなければいけなかったような気がしますが

保険会社の係員に病院を紹介して欲しいと言ったら、「どうして病院に行きたいの、医者じゃ駄目なの」という質問がかえった。外国の事情というのは良く分からんが、クリニックと総合病院の差だろうか? どっちでもよいから教えて欲しいと言ったその答えが「分からない自分でさがして」だった。どうやってと聞き返すと「知らない、インターネットででも・・・」


教わった住所に行ってみると普通の一軒家である。ドクター○○という板が壁にくっついていた。多分ここが病院だろうと中庭の方へ入っていった。同じ板が張り付いているドアの呼び鈴を押す。ジリリリ・・・。背後に人の気配がした。


不審気にこちらを見つめる女A。医者の奥さんであった。学歴の高そうな顔をしている。映画『ビューティフル・マインド』のジェニファー・コネリーのようだ。

「14:45分に予約してるものですが。元太郎です」
「ああ、ちょっと待って」

しばらくして夫出てくる。これがなんとジョン・ナッシュ本人の生き写しだ

「朝電話した元太郎ですが・・・」
と私
「今12:45分ですけど」
とお医者さん。


時計を確認するまでもなく確かに今は13時前。山小屋から町に下りる途中につかうバスが一日数本しかないのだ。待合室ででも待たせてくれるかと思ったがどうやらムリな様子・・・ あきらめて出直すことにした。


無言で立ち去るのもなんだから

「すこし食事とって来てかまわないでしょうか」

と私。

腹部異常で診てもらうのだからすこし気になった

「分かりません。まだ診てないので。食べたいならどうぞ」

とお医者さん。

別に何でもいいらしい。GAPに数軒ある内の中華料理屋に行ってスープとコーラを頼んだ。固形物は口に入れる気がしない。痛みがひどくなるのが決まって食後であったから心配だった。でも少し食欲はあった。やっぱりスープは中華、おいしかったのでもう一つ頼んだ。


時間通りにお医者さんの家兼診療所に戻る。呼び鈴を押す。さっきの私服とは違って白衣を着たお医者さん登場。今度はこころなしか対応も少し丁重だ。

玄関を入ると待合室がある。何だあるんじゃあないかと私。その奥のもう一つの扉を入れば診療室。


へえ、とドイツの診療室に感心する私。これは病院というより事務所だ。大きな事務机の上に理科室にあるみたいな人体模型。本棚には青のファイルが多数。本も多数。ブラインダーの窓越しには中庭と隣の家。今年は未だに雪が降らない。


もちろん英和を持参している私。独和・和独は山小屋の家畜(ヤギ数匹)に食べられた。

「それで、どうされたんですか」
「数日前から腹部に違和感がありまして。ちょっと気になるくらいだったんですが昨夜になって寝られないほどに痛み出しました」

お医者さん、日本の先生方と違って患者が質問に答える度、そのことを観察メモに書き綴っていく。なるほど慎重だ。これなら総合的に病状を判断できる。

痛みは重い? 鋭い?      A 重い
ずっと痛む? たまに痛む?    A たまに
お腹にもともと異常は     A たまにくだったりする
何か病気をしたことは     A ないと思う        
家族に特殊な病気をした人ありますか   A はい、お母さんが胆石
酒は飲む?          A ここはバイエルンですよ?
タバコは           A 吸わない
食事は何           A ソーセージとバター
具体的にどこの箇所が痛む   A みぞおちらへん
痛みは移動する?      A たぶんしない

等等。


ひととおり聞き終わったあとでいよいよ診察
寝台に横になる。


お医者さん、なにやら診察機器を持ってくる。どっかで見た覚えが。

たしかこれは胎児を見るときにつかうやつだ。

「シャツをまくって下さい」
「全部脱いだ方がいいですかね?」
「いえ、まくるだけで結構です」

厚着してたので念のために聞いただけ、そういった趣味はありません。

端末にぬるぬるのジェルみたいなのをぬるお医者さん。

「すこしひんやりしますが我慢してください」

ひんやりとする私のお腹。

画面越しに始めて自分の胃を見る。へえ。結構小さいんだな。もっとまるまるとしてると思ってた。メロンみたいなじゃあなくてバナナの真ん中がちょっと太ったくらいだ。ほっそりしてる。しまってる。


しばらく画面を観察するお医者さん。吸って、とめて、はいOK、とかの繰り返し。

「何か食べましたか」
「はい、中華スープを」
「そのようですね」
「穴はあいてませんか」
「あいてません。胆石でもありませんね、それじゃあもうよろしいですよ」


何せ生まれてはじめて経験する痛みだった。体に異常が起こって病院に行った経験など皆無。それだけに心配。お医者さんの話では「潰瘍の場合はもっとひどく痛む」ということだった。

診察結果は「炎症のうたがい」。ただの炎症、されど炎症。

「とりあえず一週間分の薬を渡しておくから、もしそれでも痛むようなら来月曜日に至急、痛みが治まれば来金曜に再度来てください」
「先の一週間は飲酒しないで下さい。それとソーセージとかバターは良くないです」
「何を食べればよいでしょうか」
「白パン、果物、野菜、・・・卵もまあ構いません、時々なら」

私の食生活この日から一変しました。食べ物に気をつかう人生。早々にスタートです。

てななんとかで診療終了。


その後しばらく世間話。
「去年は11月16日に雪が積もって春まで融けませんでした。今頃は2メートルほど積雪があったんですが今年は全く違いますね」
「それにしてもこの時期全く雪がないというの不思議ですね、先の数日で南山の頂付近の雪までとけてしまいました」
「ええ、僕の家の水桶の氷も融けました。野外ホッケー場のリンクも融けていました」
「山羊を飼ってるんですか、室内で?」
「ええ、大家の山羊なんです。てか、僕が山羊の部屋に居候してるんです」


話は変わるけど、冬を前に牧場の家畜の大移動が見られますよ。車が行き交う町の大通りに数百等の羊の群れが現れた時には驚きました。この町では救急車両と家畜の群れには自動車は道を譲ります。まるでモーゼの海のように路肩に寄せて真っ二つ。。 先頭のお父さんが耕運機にのって群れを先導。後ろから10歳くらいのこども数人が群れから離れようとするはぐれものを追いかけて群れに戻す・・・

明日からまた勉強再開だ。


もしかしてドイツ在住ですか? うらやましい限りですね

霊になってしまったのか・・。

霊はどうやって文字を入力するのかな、と思ったり。
やっぱ、霊でも普通に指でキーボードを押すのが有望だなー、と思ったり思わなかったり。

先の話には一部フィクションが含まれます

てか、あの世から失礼をば・・・

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